Japanese
English
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
Ⅰ.緒言
頭蓋内に腫瘍が発生し成長していく過程で種々の症候を呈するが,それらは一般に頭蓋内圧亢進症状と局所症候に分けられる.前者は,古くから脳腫瘍の3主徴と称せられる頭痛,嘔気,うっ血乳頭などが挙げられ,腫瘍の存在を疑わせる症候である.一方,後者については,いわゆるsilent areaに存在する場合を除き,腫瘍の局在部位に一致する神経学的所見を呈ける.すなわち,正確な神経学的観察を行うことにより,障害部位の科学的推定が可能である.それ故,脳腫瘍を含め神経疾患一般において,その局在診断には詳細な神経学的観察が重要である.勿論,神経放射線学を始めとする補助検査法も重要であるが,診断上の本質的な基盤を作っているものはやはり臨床神経学的な諸検査であろう.
しかるに,時に腫瘍の局在部位から離れた遠隔部位の症候が認められることがあり,局在診断上,惑わされる場合がある.すなわち,従来よりfalse localizing sign(以上F.Lo.Sと略す)として報告されている症候が存在する.著者は教室における臨床経験から,F.Lo.Sが,後頭蓋窩腫瘍に比較的多く認められるとの印象をもっている.それ故,後頭蓋窩腫瘍に限定して,そのF.Lo.Sを臨床的に検討し,その頻度およびその発生機序について推論を加えた論文を発表した19).
Clinical study is based upon the results of 68 cases of infratentorial tumor which have been examined in the Dept. of Neurosurgery, Tokyo Jikeikai University Hospital during the year 1967 - 1977. False lateralizing signs (F.L.S.) were studied of 57 cases except 11 pontine tumors. The incidence of this peculiar signs was 19.2%, in 57 cases of infratentorial tumors, including 31.5% in 19 cases of cerehellopontine angle tumors, and 23.8% in 21 cases of cerebellar heimsphere tumor. A number of hypotheses have been proposed in the literature with regard to false lateralizing sign.
Copyright © 1978, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.