連載 症候学メモ・53
False negative adiadochokinesis
平山 恵造
1
1千葉大学神経内科
pp.630
発行日 1989年6月1日
Published Date 1989/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406206340
- 有料閲覧
- 文献概要
◆陰性の徴候を陽性ととり過ぎるのは若い神経(内)科医がよくすることであるが,逆に陽性の徴候を陰性ととらえるのも,ときにみられることである。その原因が患者のトリックモーションにあることがある。患者はそれを意図してはいないが,上手に出来ない動作を,何とかうまくやろうとして,結果的にはトリックしていることになる。ここに示すfalse negative adiadochokinesis,すなわち反復変換動作障害の偽りの陰性徴候がそれである。
◆通常,我々がdiadochokinesisと呼んでいる動作については,紙面の都合もあり,ここでの説明を省略するが,小脳性運動失調患者の中には,一見,adiadochokinesisはないかの如くに,うまく手首を回内・回外してみせるcaseがある。患者は意図的にそうしているのではないが,本来の動作をしようとすると,うまく出来ないことを身を以って経験しているので,トリックモーションでこれを補っているのである。これには少なくとも2つの動作がある。
Copyright © 1989, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.