Japanese
English
総説
脳のきずの治り方
Healing of Brain Wound
北村 勝俊
1
,
澤田 浩次
1
,
大田 秀穂
1
Katsutoshi KITAMURA
1
,
Koji SAWADA
1
,
Hideho OHTA
1
1九州大学脳神経病研究施設外科
1Department of Surgery, Neurological Institute, Faculty of Medicine, Kyushu University
キーワード:
Brain wound
,
Cicatrix
,
Healing
,
Organization
Keyword:
Brain wound
,
Cicatrix
,
Healing
,
Organization
pp.107-114
発行日 1976年2月10日
Published Date 1976/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1436200405
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モントリオール神経学研究所の玄関ロビーの天井は一面小脳のGolgi標本を図案化してデザインされているが,その中央に脳を象徴する牡羊の頭と,同じく脳を表わすものとして古代エジプトのEdwin Smithのパピルスから取った象形文字が画かれ,それを取り巻いてGalenから引用したギリシヤ語が書いてある."I have seen a wounded brain healed"という意味だそうである.Galenは脳のきずがどのように治るのをみたのであろうか.外科は手術的療法を追求するものであるが,手術的療法とは,きずの治ることを期待して,人工的に新しいきずを作ることにほかならない.したがって外科学がまず教える所は創傷治癒である.このことは脳神経外科でも同じであり,われわれ脳神経外科医も,自身患者の脳に加えたきずがどのような治癒過程を経て,どのような形の瘢痕に落ち着くのかを知った上でメスを振るうべきではなかろうか.脳外傷の形態学的観察は数多くなされているが,脳の手術創についての報告は意外に少ない.著者の一人北村4)は人脳手術創について,各時期の組織像を光顕的に調べたことがあるが,その後次第に電顕的観察も盛んに行われている一方では,脳に対して単に切開,穿刺等の機械的組織断裂のみでなく,諸種の金属あるいはプラスチック等の異物を永久に留置することも,新しい脳外科技術として益々広く行われるようになっており,これら異物に対する脳の組織反応もまた重要な課題である.
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