連載 心まどえる老人と支える人々の話—痴呆性老人をめぐる諸問題・5
痴呆は治るか治らないか
片桐 隆
1
,
堀内 靜子
1
1国立小諸療養所
pp.150-155
発行日 1995年2月10日
Published Date 1995/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662901096
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痴呆性疾病の治療法について
痴呆性疾病は治るのか治らないのか,といった疑問が生じてくるのは当然である。しかもこの疑問は,アルツハイマー型老年痴呆が治るのか治らないのか,あるいはさらに予防法はあるのか否かといった問題にも拡大してくる。一言で言ってしまえば治るとも治らないともいえないが,治療法は大変に困難だとしか言えない。
アルツハイマー型老年痴呆が,未だ病因が把握されていない疾病であり,脳の殊に皮質の神経細胞が侵害される器質的な障害にもとつく疾病であり,慢性で進行性の疾病であるという点から見れば,治療も予防も極めて困難な疾病であることは明白であるように見える。だから,アルツハイマー型老年痴呆は治らない病気であると言い切ってしまう人も出てくる。けれども,その一方では,人間のあらゆる疾病で,病状が変化しない病気というものは存在しない。例えば梅毒によって生じてくる進行麻痺でさえ改善した例がある。脳の一部が崩壊したにしても,残された部分が代謝機能を発揮してくることもある。
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