扉
小手先だけの脳神経外科医
最上 平太郎
1
1大阪大学脳神経外科
pp.877-878
発行日 1975年11月10日
Published Date 1975/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1436200369
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「頭がきれて手先のきれる外科医が最も良い.頭はきれるが,どうにも手先のきれないのはまだ見込がある.しかし,小手先だけのきれる外科医は最も始末が悪い.」と.これは私が阪大医学部第二外科教室の新入医員であった当時,岩永仁男教授の言われた言葉である.何でもないような言葉であるが,どのようにも解釈できる意味深長な言葉である.手術というものは別に本を読まなくても見様見真似で或る程度のレベルには達するものである.しかし,それ以後は各症例についての十分な観察と反省,それらをもとにしての研究がその人の進歩を左右することになる.どんな手術にっいてもいえることであるが,脳神経外科の手術はとくに術前の手術についての検討が極めて重大である.手術時の患者の体位,開頭部位とその範囲がまずその手術の成否を運命づけることになる.最初の頃は開頭部位がどちらかに偏したり,大きすぎたり,小さすぎたりして中々うまくいかないことが多く,開頭創をみると初心者か,なれた人かよく判るものである.ついでapproach,手順によって手術を成功にも不成功にも導く.疾患によっておよそ手術方法の基準といったものはあるが,各症例について差があり,画一的な方法でやれるものではなく,それなりの対策をたててのぞまなければならない.
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