扉
脳神経外科医への期待
朝長 正道
1
1福岡大学脳神経外科
pp.101-102
発行日 1977年2月10日
Published Date 1977/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1436200571
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人間の性格や考え方は環境によって大きく影響されます.見も知らぬ人でもしばらく一緒にいると,どうも同業者らしいと職業によっても何か共通した雰囲気があるようです.また医師はその専門科により,あるいは卒業した大学や籍を置いた教室によって似通った何かが感じられます.この点脳神経外科医は一般に変わり者が多いと医師仲間から思われているようです.理屈っぽく,目立つことが好きで,人の言うことなどには耳を借さぬ,つき合いがたい人種だとあまり芳ばしくない評価です.しかし一方,あの難解な脳をいじり,長時間ねちねちと手術をするタフな奴と尊敬とも軽蔑ともつかぬ目で見られているのもたしかのようです.脳神経外科医に対するこんな評価は世界的な傾向のよりに思われます.
脳神経外科医は,小さな脳の中に全生命を,全人格を,そして人間としての種々な機能を自分の手で局限まで追求せねばなりません.このためにきびしい論理の積み重ねと,全体的な方向の正しい把握と,そして時機を失することのない冷静な決断と実行が要求されます.このように人間の管理中枢に自分の責任でメスを加えるということから,脳神経外科医は物事に対していつも第三者的な態度を取り,発言をするようになったのではないでしょうか.こんなところが独善的だ,いじわるだ,冷たいとかの芳ばしくない評価の根拠だと思います.
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