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Ⅰ.はじめに
高線量放射線治療は膠芽腫を中心とする悪性脳腫瘍の生命予後を確実に延長している3,6,9,24).また転移性脳腫瘍に対しては定位放射線治療が積極的に適応され,これも生命予後の改善につながっている21).一方でこれら高線量,高精度放射線治療の適応により,症候性脳放射線壊死が問題となっている.
この症候性脳放射線壊死に対してはステロイドホルモンなどが経験的に投与されてはいるが,有効な治療法は確立されていない.またその診断も通常のMRIでは難しい.右後頭葉と左頭頂葉の多発性の転移性脳腫瘍(原発巣は乳癌)に定位放射線治療を行った後で生じた脳放射線壊死に対して,壊死巣除去術を行った症例の術前後のMRIをFig.1に示す.術前の画像では,gadolinium(Gd)で造影増強され,その病変を中心とした広範な脳浮腫を認めている.このMRIの所見からは腫瘍の再発との鑑別が不可能であるが,後に述べるアミノ酸トレーサを用いたpositron emission tomography(PET)により,脳放射線壊死と診断した.この浮腫により右片麻痺を生じていたが,ステロイドホルモンの投与によっても症状は改善しなかったので,壊死巣除去術を行った.この症例はわれわれに多くのことを教えてくれた.手術操作は2個の造影病変のみを摘出したが,この手術操作により,術後早期から浮腫の劇的な軽快を認めた.われわれ脳神経外科医は,造影される壊死巣本体を摘出すれば,このような浮腫の軽減につながることを経験的に認識していたが,なぜ造影病変のみを摘出すれば,浮腫の軽減につながるかは不明であった.この手術により,患者は歩行可能となったが,一方で視野狭窄は悪化した.当時はステロイドホルモン以外には手術しか浮腫の軽快は望めなかったので手術を選択したが,時には術前より症状を増悪させることもあり得る.
以下に,われわれが壊死巣除去術を行った病理組織標本での組織学的,免疫組織学的な解析から,脳放射線壊死の病態を解説する.
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