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Ⅰ.はじめに
脊椎インスツルメンテーションの定義は明確ではないが,一般的には「脊柱の安定性を再構築するために,脊柱の一部になんらかの専用のimplantsを一時的ないし永続的に装着する手技」を指す.従来から行われてきた移植骨とワイヤーのみの固定術は通常含まない.また,同時に骨移植を行って骨癒合を得ることにより,永続的な脊椎安定性を達成することを原則とする.
脊椎インスツルメンテーションはおおむね1960年代のHarrington rodにはじまり,1990年代に飛躍的な発展を遂げた.その結果,従来は骨癒合が得られるまで長期間の安静を余儀なくされていた患者の早期離床・社会復帰が可能となり,患者の機能予後が格段に向上した.また,強固な固定が得られるため,癒合不全の割合は大幅に減少した.しかし,固定性や視認性に重点が置かれたため,侵襲性についての犠牲はやむを得ないとの考えから,大きな手術創や術後の創部痛に関してはやや軽視されてきたきらいがあった.ところが2000年代に入ると,強固な固定力を維持しつつ,より低侵襲な手技が出現してきた.その代表例が腰椎椎弓根スクリュー固定法における経皮的手技であり5),本邦では遅れて2005年に認可され,使用可能となった.その後も使いやすいシステムが次々に開発されており,こういった低侵襲な手術手技は今後の脊椎インスツルメンテーションの主流となっていくものと思われる.さらに将来的には,脊柱の可動性を維持しながら,いかに安定性を確保するかも大きな課題である.欧米や中国・韓国などでは既に人工椎間板が使用されているが,長期成績を考えると,適応やデバイスに関して未だ解決されるべき問題点も残されている.こういった脊椎インスツルメンテーションの過去・現在を脳神経外科医の立場から振り返り,今後の脊椎インスツルメンテーションの方向性についても考察を加えたい.
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