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今月号の扉,秋山恭彦先生の「マイシューズのすゝめ」は,若い脳神経外科医への激励として貴重な提言である.私は研究室時代,動物の胎仔脳から細胞移植のための組織を取り出す際に卓上型実体顕微鏡を使っていた.これがマイクロサージャリーの練習に最適であるのに気づき,早速1台自宅に購入してガーゼで吻合の練習を行った.高価なマイシューズだったが,秋山先生のおっしゃる「仕事に凝る」ことが充実した医師生活につながっていったと思う.本誌の人気シリーズ「解剖を中心とした脳神経手術手技」には,原政人先生が「頚椎神経根症の手術手技」をわかりやすい模式図つきで解説してくださった.臨床の場に役立てていただきたい.連載の先天奇形シリーズは,長坂昌登先生が豊富なご経験を基に多くの引用論文を網羅された「脊髄髄膜瘤」の総説であり,現時点での本疾患の知識を整理するのに極めて有用である.その他,研究,手技,症例報告など読み応えのある多くの論文が掲載されている.
2010年から2011年にかけて,3Dと電子書籍に関する話題がマスコミを賑わせている.3Dについては顕微鏡画像のモニタを教育目的で3D化することや,神経内視鏡への応用などが,脳神経外科分野の直近の話題であり,電子書籍も大きな発展が望める領域である.各種の医学雑誌がPDFのスタイルで供給され,電子書籍として持ち歩けるようになった.さらに,書店で販売されている書籍や雑誌を電子書籍化してiPadなどに入れることが流行しつつある.自分で電子書籍化することを「自炊」と呼ぶようになった.「自炊」のためのスキャナーや裁断機も売られているし,新聞でも「自炊の仕方」という特集記事が掲載されるほどである.私はかつて本誌で「IT自由自在」という連載を担当し,2004年の連載開始時に両面スキャナーが書類の保存に有用であると書いたが,まさか,書籍まで自分で電子化する時代になってくるとは思わなかった.「自炊」すると,机の周りの書籍類の山が少しは片づくメリットもあるが,電子化自体が目的になってはいけない.自炊したものを食べる,すなわち読んで内容を吸収しないと意味がないことを改めて肝に銘じるべきであろう.
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