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連載 臨床神経心理学入門
第5回 脳外傷:Diffuse Axonal Injury(びまん性軸索損傷)と脳梁病変
Understanding Clinical Neuropsychology: A Basic Approach(5)Brain Injury: Diffuse Axonal Injury and Callosal Lesion
近藤 正樹
1
Masaki KONDO
1
1京都府立医科大学神経内科
1Department of Neurology,Kyoto Prefectural University of Medicine
キーワード:
brain injury
,
diffuse axonal injury (DAI)
,
corpus callosum
Keyword:
brain injury
,
diffuse axonal injury (DAI)
,
corpus callosum
pp.945-950
発行日 2010年10月10日
Published Date 2010/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1436101271
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Ⅰ.はじめに
重度の閉鎖性脳外傷の回復過程は以下の3段階により特徴づけられる13).①発語,随意運動,自発開眼のない昏睡の時期,②患者が錯乱し,進行中の出来事が記憶できず,行動障害を起こしやすい時期,③病前の状態には戻っていないが,認知機能や日常生活活動が回復してくる時期.本論文では,この第2から第3の時期の高次脳機能障害に焦点を当てる.
脳外傷の高次脳機能障害について考える時,大脳の構造の理解が重要となる.大脳の構造はリンゴに似ている.140億の神経細胞体の集合である大脳皮質を表面の皮であるとすると,神経線維(軸索)からなる白質は果肉,基底核が芯にあたる.大脳皮質は厚さ1.5~4.5mmの薄い層である3)が,Penfield以来機能の局在が明らかにされている.このため,皮質損傷ではその部位に局在している機能の障害が出現すると考えられる.一方で白質は皮質間の連絡(連合線維),左右の大脳半球の連絡(交連線維),下位の神経系との連絡(投射線維)を行っているため,白質損傷では局在機能部位の連絡が遮断され,いわゆる離断症候と呼ばれる機能障害(例えば,視覚皮質と言語野との離断による純粋失読など)が生じる.
一方,Gentryらは,外傷性の一次性脳損傷をMRIの所見により,びまん性軸索損傷(diffuse axonal injury:DAI),大脳皮質挫傷,皮質下灰白質損傷,一次性脳幹損傷の4型に分類し,DAIが最も高頻度であると報告している8).
本論文では,外傷性脳梁損傷を来した症例を紹介し,脳外傷による脳梁病変とびまん性軸索損傷について概説する.
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