コラム:医事法の扉
第53回 「脳腫瘍」
福永 篤志
1
,
河瀬 斌
2
1国家公務員共済組合連合会立川病院脳神経外科
2慶應義塾大学医学部脳神経外科
pp.866
発行日 2010年9月10日
Published Date 2010/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1436101256
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「脳腫瘍」の場合,通常,何らかの神経障害を契機に発見されますが,無症状で偶然発見されることもあります.術後の神経障害の内容と程度は,腫瘍の部位・大きさ,悪性度,術前の神経症状,年齢,アプローチ,手術手技,術中モニタリングの効果などが複雑に影響します.このような臨床的特徴から,脳腫瘍に関連した医療訴訟には,脳動脈瘤とは少し異なる裁判上の特徴があるようです.
平成元年以降の11判例をみますと,裁判上の争点としては,「因果関係」,「誤診等不適切な診療行為」(以上,同順位),「手術・検査・治療手技の過失」,「説明義務違反」,「管理義務違反」,「手術・検査の不作為・懈怠」の順に多いことがわかりました.そのうち裁判所の認容率が特に高かったのは,「因果関係」(90%)と「管理義務違反」(80%)でした1).管理義務違反が高率に認容された理由として,モニタリングの機会が脳動脈瘤よりも比較的多く,モニタリングによる管理方法は通常標準化されていることから,術後に予測以上の障害が発生した場合に,当時の医療水準に満たない方法で管理をしていた時には医療側の過失が認定されやすいからではないかと考えられます(もっとも,今後裁判例が増えると傾向が変わるかもしれません).
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