コラム:医事法の扉
第50回 「予防接種」
福永 篤志
1
,
河瀬 斌
2
1国家公務員共済組合連合会立川病院脳神経外科
2慶應義塾大学医学部脳神経外科
pp.586
発行日 2010年6月10日
Published Date 2010/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1436101192
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予防接種は,麻疹,結核などの一類疾病(予防接種法2条2項)と,インフルエンザの二類疾病(同条3項)に対して行われます.最近では,新型インフルエンザが記憶に新しいでしょう.
では,予防接種の副作用で患者に健康被害が発生した場合,被害の塡補はどうなるのでしょうか.この問題は,「賠償」と「補償」を理解することから始まります.賠償も補償も,「行為(接種)」と「結果(後遺障害など)」との因果関係がなければ請求できません.両者の違いは,「賠償」が接種側(当該医師や国)に過失がなければ成立しない一方で,「補償」は過失を必要としない分その塡補範囲は制限されているという点にあります.以前は「補償」されなかったのですが,多くの予防接種を実施すると,ある確率で後遺障害は発生するので,予防接種制度を維持するためにもこの被害は過失の有無にかかわらず「補償」すべきであると考えられ,昭和51年に補償規定が設けられたのです(最近では「産科補償制度」など).
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