コラム:医事法の扉
第23回 「証拠保全」
福永 篤志
1
,
河瀬 斌
1
1慶應義塾大学医学部脳神経外科
pp.277
発行日 2008年3月10日
Published Date 2008/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1436100712
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今回は,医療事故後に患者側の申立てにより行われる民事訴訟手続きのうち,最初でかつ重要な手続きの1つである「証拠保全」をとりあげます.この手続きで確保した資料を基に,患者側が訴訟を提起するかどうかを判断することになります.
民事訴訟法234条には,「裁判所は,あらかじめ証拠調べをしておかなければその証拠を使用することが困難となる事情があると認めるときは,申立てにより,この章の規定に従い,証拠調べをすることができる」と規定されています.「その証拠を使用することが困難となる事情」とは,主として証拠隠滅を指し,カルテの改ざんがそれにあたります.患者側は「証拠保全の事由」(民事訴訟法規則153条2項4号)を書面に記載し,それを疎明しなければなりません(同3項)が,裁判所は命令を発する前に病院側の意見を聞く必要はなく,通常患者側の申立てを許可するようです.結局われわれとしては,突然,裁判所から命令が発せられることになります.執行官による送達のあったその当日に裁判官と書記官および患者側弁護士がやってきて,大量の診療録や画像フィルム等をコピー(あるいは写真撮影)していきます(フィルム等については預り書を出して借り出すこともあります).
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