海外留学記
医療とは恋(amour)のように~パリからの留学だより―Service de Neurochirurgie, Hôpital Lariboisière Paris, France
安田 宗義
1
1愛知医科大学脳神経外科
pp.931-933
発行日 2009年9月10日
Published Date 2009/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1436101021
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当教室の高安正和教授のご紹介・ご高配により2008年7月からフランス・パリで臨床留学を開始することができ,こちらでの滞在も10カ月になりました.私が留学しているパリ第7大学付属ラリボアジエ病院はパリ北駅隣にある古い施設で,住所には近代外科学の祖Ambroise Paré(アンブロワーズ・パレ)の名を冠しています.建物は江戸時代末期(1850年代)のものでパリの史跡にも指定されていますが,今でも現役で使用されています.脳神経外科の手術件数自体はフランス国内の脳神経外科施設としてかなり少ないのですが,主任教授のBernard George(ベルナール・ジョルジュ)先生は頭蓋底外科,とりわけ頭蓋頚椎移行部手術で世界的に知られており,頭蓋底顔面手術・上位頚椎腫瘍の症例が集中しています.患者さんもフランス国内にとどまらず,ヨーロッパ全土や北アフリカから紹介されてきます.
私はここで,主に頭蓋底・脊椎外科の勉強をしています.8月上旬ころから5月までに170件程度の手術に参加し,およそ6割が頭蓋底を中心とした開頭術,4割は腫瘍を中心とした脊椎手術でした.過半数は見学ですが,しばしば助手として参加をさせてもらう機会もあります.言葉があまり通じず,道具や方法も異なる海外において,日本人としてただ1人で手術に参加するというのは大変緊張します.当たり前とはいえ,何より患者さんには迷惑をかけられません.それだけに技術面だけでなく精神面でも随分鍛えられた気がします.George教授からは大変親切にしていただき,私に対してはフランスの制度枠内で破格の待遇をしてくださっていると思います.
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