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海外の脳血管内治療の現場に触れるため,1年数カ月と短い期間ではありますがフランスのパリ市19区にあるRothschild Fondation Hospitalに行って参りました.Rothschildは,日本では「ロスチャイルド」と呼ばれていますが,フランスでは「ホートシルト」と発音します.この病院は頭頚部領域診療に特化された特色があり,具体的には眼科,神経科,神経外科,神経放射線科,耳鼻科の専門診療と麻酔科,蘇生科,一般放射線科で構成されています.現地の人に聞いても,首より上の病気にかかった場合はこの病院,と認識されているようです.ほとんどの患者はパリ市内もしくは周辺からの紹介になります.また,ときどきフランス領の遠く離れた島国などからも飛行機で患者が訪れたり,搬送されたりすることもあります.ちなみにパリ市内にもう1カ所同名の病院がありますが,そちらでは首から下の病気を扱っているようです.
神経放射線科(Neuro-Radiologie Interventionelle)が私の留学先でした.科長のDr. Michel Piotin(ミシェル・ピオタン)以下4〜5人のスタッフとインターンで構成されており,海外から常に多くの留学者や見学者を受け入れています.私がいた頃はイタリア,アルジェリア,ベルギー,アルゼンチン,ブラジルなどの地域から医師が来ていました.この病院のなかでは日本人は当時私だけでしたが,過去には私の師匠である飯島明先生(JCHO東京新宿メディカルセンター)を含め何人もの先輩方が日本各地から留学されています.また,同病院の脳神経外科はてんかん外科の世界で有名なようです.神経放射線科の治療症例は年間約400件で,内訳は動脈瘤が50%,AVM/dAVFが25%,血栓回収・その他が25%ほどです.日本で多く行われている頚動脈ステントは皆無でした.また診断アンギオ件数は治療件数の2倍ほどあります.珍しいところでは小児の網膜芽腫に対する動注化学療法,皮膚の血管腫に対する経皮的な硬化療法などもありました.今後は椎体形成術も始める可能性があります.週のスケジュールは月〜木曜日まで朝のカンファレンス後,2〜3件の治療と数件の診断,金曜日だけは診断のみが4〜5件予定されています.その隙間に,週に数回はくも膜下出血や脳梗塞の治療が入りこんでくる感じです.アンギオ装置はシングルプレーンとバイプレーンのものが1台ずつあり,2つのセッションが同時に進行します.基本的には症例数は十分にありますので,日中にもてあます時間は少なめです.
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