コーヒーブレイク
恋のさざなみ
加奈子
pp.390
発行日 2009年4月1日
Published Date 2009/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543102427
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別れは突然やってきた.「今日で終わりにしよう.僕,結婚することにしたから」の一言で.去っていく後姿に私は必死に私の余韻を求めていた.それから数日たったある日,小さな小包が送られてきた.一緒に行ったレストランや喫茶店の名前が印刷されたマッチの外側の紙で作った箱であった.当時はどこの店にもマッチが置いてあり,それがネットの普及していない時代の宣伝手段であった.ちょうど3年間付き合っていたのを思い出させる3段重ねの小箱.マッチ箱の外側をはがして,ずっととっていたなんて.あーなんてすばらしいことを.思い出のたくさん詰まった贈り物は私を和ませてくれた.
時折,何かの会で会うと,「元気だった?」,「元気だよ」と目と目の合図でお互いの健在を確認しあう行為は,なぜか胸が締め付けられる思いであった.
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