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今回は,医療過誤問題とは離れて,病院の開業に関する法律上の問題を取り上げます.診療所や病院を開業するにあたっては,医療法に基づく諸手続が必要となります.例えば,臨床研修などを修了した医師が診療所を開設した場合には,開設後10日以内に診療所の所在地の都道府県知事に届け出ればよいのですが(医療法9条),病院を開設しようとするとき,あるいは医師でない者が診療所を開設しようとする場合には,開設地の都道府県知事の許可を受けなければなりません(7条1項).もっとも,営利目的でなく,医療従事者の人数,診察室,処置室などの設備が充足してさえいれば,原則として,許可は与えられることになります(同条4項,5項).ここで,地域事情に応じた医療の提供を確保するための「医療計画」(30条の4)に基づき,基本病床数の枠による制約が問題となりますが,都道府県知事は,医療審議会の意見を聞いて,新たな病院の開設や病床数の増加の中止を勧告することができます(「中止勧告」,30条の11).開業することは憲法上保障された職業選択の自由から派生しますが,「公共の福祉」(保健医療を遂行できるか)により制限が課せられるという関係になります(憲法22条1項).
このように,病院の「乱立」や「不適切な増床」を防止するために,行政上の調整が行われますが,行政の処分に不服がある者は,原告適格,処分性などの訴訟要件を満たした場合に限り,裁判所に行政処分の取消訴訟(行政事件訴訟法3条2項)を提起することができます.「原告適格」とは,原告として訴訟を追行し判決を受けうる資格で,「法律上の利益を有する者」(9条1項)に与えられます.「処分性」とは,行政行為のうち,直接国民の権利義務を形成し,あるいは,その範囲を確定することが法律上認められているものをいいます.つまり,1度決定した行政処分の効力(公定力といいます)を排除するための取消訴訟を提起するには,結構高い「ハードル」があるのです.
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