コラム:医事法の扉
第24回 「患者の期待権」
福永 篤志
1
,
河瀬 斌
1
1慶應義塾大学医学部脳神経外科
pp.353
発行日 2008年4月10日
Published Date 2008/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1436100726
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医療契約の債務不履行(民法415条),あるいは医療側の不法行為(715条)に基づき損害賠償請求された場合,医療側に債務不履行・不法行為のいずれも認定されなかったとしても,患者の期待権が侵害されたと判断されることがあります.すなわち,医療側に不適切な行為があり,その結果,患者が適切な治療を受けることができなかった場合には,たとえ適切な治療を受けても結果が同じ(たとえば末期癌による死亡)でも,適切な治療を受ける利益が侵害されたということを理由に,慰謝料として損害賠償を認める考えがあります.
医療側としては,いかなる治療を施しても,病気から回復させることができない場合には,たとえ特定の治療を行わなかったとしても,患者の損害と医療側の不作為との間には因果関係は存在しないと主張できそうですし,因果関係がなければ,損害賠償請求権は発生しないのが原則です.しかし,下級裁判所の判決には,「期待権侵害」に基づく損害賠償を認めるものもあります.
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