コラム:医事法の扉
第16回 「転倒・転落事故」
福永 篤志
1
,
河瀬 斌
1
1慶應義塾大学医学部脳神経外科
pp.821
発行日 2007年8月10日
Published Date 2007/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1436100598
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脳神経外科では,入院患者が病棟内で転倒したり,ベッドから転落したりするなどの事故がしばしば発生します.病院は,診療契約(民法656条)に基づき,入院患者を適切に管理する義務を負いますので(644条),入院患者が転倒・転落して怪我をしてしまうと,病院の管理責任あるいは不法行為責任(709条,715条)を問われる可能性があります.
転倒事例として,多発性脳梗塞の72歳女性(安静度トイレ介助歩行)が,入院した翌朝にトイレ前で転倒し,急性硬膜下血腫で死亡したケースで,「担当看護婦には,患者がトイレに行き来する際は,必ず患者に付き添い,転倒事故の発生を防止すべき義務があった」と判示し,病院側の不法行為責任を認めました(東京高裁平成15年9月29日判決).ただ,この事例では,患者自身が歩行時の介助を拒否していたので,大幅な過失相殺(722条)が認定されています.
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