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貴誌に掲載の目黒俊成先生らの症例報告「脳室穿刺により気脳症を合併した1例」(No Shinkei Geka 33:607-610)を興味深く拝読いたしました.用手的脳室穿刺の不成功による合併症を述べておられますが,私も後角穿刺例において不成功は多数経験しております.複数回の穿刺を行うも脳室に達せず断念した例もあります.この経験に鑑み,適正な穿刺方向を求めるために,イニオン,穿頭部,脳室構造のジオメトリーを検討したところ,これらの間の位置関係は個体差が大きく穿刺方向の標準化は不可能との結論を得ました1).このため,この数年は予定する穿頭の位置に金属マーカーを貼り,スカウトビューを含むCT検査を術前に行っています(Fig. 1).拡大印刷したスカウトビュー(可能であれば実寸大が距離の測定に便利)のリファレンスライン上に側脳室の輪郭をプロットすることで,sagittal,axialの両平面上で穿頭位置,脈絡叢を避け前角に達する穿刺方向とそれにより決定される前額部のaim point,脳室に達する距離を確認できます.マーカーの位置を基準に,穿頭の位置は頭尾側,内外側に適宜変更します.プロットの手間を要しますが,手術時の安心感は変え難いものがあり,本法導入により術中のdisorientationは著減しました.併せて矢状線が床と平行になるよう体位をとることもdisorientationの予防に有用です.術中に超音波ガイド下に穿刺される施設もあると思われますが,今回提示の方法ではその前段階である穿頭位置の確認も行えます.ナビゲーション装置の登場した現在,原始的な方法ではありますが,もはや教科書どおりの体表ランドマークを基準とする穿頭位置,穿刺方向で画一的に本手技を行うことは避け,術前に症例ごとのtailored planningが必要と考えます.
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