扉
コンピュータ支援手術雑感
渡辺 英寿
1
Eiju WATANABE
1
1自治医科大学
pp.197-198
発行日 2005年3月1日
Published Date 2005/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1436100038
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コンピュータ支援手術という用語が使われるようになって,はや15年以上の歳月が経った.今では脳神経外科学会でも定番の話題である.
振り返ると,私がニューロナビゲータを発表したのは1987年である.コンピュータ支援手術という用語が定着し始めたのはそれ以降であろうと思う.そのころ,工学者と医学者が合同でコンピュータ外科学会を発足させた.面白いことにほぼ同じころ,米国からもニューロナビゲータと同じようなシステムが報告された.これは超音波を発信して距離を測るもので,さらに手術顕微鏡内に目標物の輪郭を投影するという現在でも最先端の技術を統合したものであった.残念ながら,当時のコンピュータの処理能力が追いつかなかったためか実用化しなかった.私のものはアーム式で表示も比較的単純な仕様であったので,何とか商品化第一号となった.当時,コンピュータはパソコンとして普及しつつあったがOSはDOSの時代でマウスもなく,画像表示は初歩的でCT画像を表示するだけでも精一杯の状態であった.その後,パソコンの機能は急速に向上し,普通のパソコンでも三次元再構成が可能な時代となった.最初は,コンピュータに慣れないドクターでも違和感なく使えるように,“コンピュータらしくない”装置をつくることに腐心したものであるが,現在ではコンピュータはごく普通の存在となり,ようやく手術室の中でも市民権を得始めたように思われる.コンピュータ支援手術を行っていること自体が学会での“売り”にならなくなってきた現在において初めて,実用化技術としての地歩が固まったのではないかと思う.
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