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まえがき
意識と記憶は,精神現象(精神症状,知能,人格像)の正常な成立への前提条件ともなる基本的なもので,したがって記憶障害と痴呆との関係も深く,この両者はアルツハイマー型老年痴呆では,混然一体となっている。これについては従来,アルツハイマー型痴呆(初老期アルツハイマー病とアルツハイマー型老年痴呆)の初期から中期にかけての,記憶の実験的追究が多くある。しかしわれわれはむしろ中期以後の,しかも日常生活における記憶障害の観察をもとにして,実験(テスト)よりも実際(自然の課題における記憶のあり方や問題点)を述べることにする。
これは,現在の神経心理学や神経生理学の記憶機構の解明という記憶障害の要素的な診断的態度というよりも,むしろ痴呆をもった個人の全体の中における精神病理学的な記憶構造を知って,その障害の臨床的な改善を心がける治療的態度ともいえる。これは実験に比して大ざっぱのそしりはまぬかれないが,鼻,耳,足のみをみて象(痴呆性記憶障害やその痴呆性老人)という姿を忘れて,昔流(Kleist)の脳神話学Hirnmythologieに陥ることなく,この障害をもちながらもその人を,少しでも知的に生きていけるようにしようという立場である。
Various types of memory disturbance accom-panying with dementia are found on the senile demented patients.
1. Malignant type of senescent forgetfulness (14 cases) : It appears in the simple type of senile dementia, that is the amnestic type. It consists of disturbance of short and recent mem-ory, complete forgetfulness of a fact of his ex-periences, progressing forgetfulness of his intimate facts and insensible to his forgetfulness.
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