病院職員のための医学知識
老年痴呆とは
大友 英一
1
1浴風会病院
pp.506-507
発行日 1981年6月1日
Published Date 1981/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541207488
- 有料閲覧
- 文献概要
老年痴呆はいわゆる"ぼけ"と同じと考えてよいのでしようか.またその原因は何ですか.
"ぼけ"は生理的な老化現象の範囲内の知的能力の低下であり,老年痴呆はこれがはなはだしくて生理的範囲を越えたもので,脳の器質的な疾患と言い得,同一のものとは考えないということが一般的な意見です.ただ脳の病理学的,形態学的変化は老年痴呆でも生理学的老化によるものと質的な相違はなく,ほぼ同じであるが量的には異なるという点,また,生理学的老化による知能低下と病的な知能低下との間に明確な線を引き難い場合も少なくない点が問題です.
広義の老年痴呆は,狭義の老年痴呆(以下老年痴呆と略す)と言われる原因の明らかでないものと,脳血管性痴呆と言われ脳血管障害が原因と考えられるものとの二つに大別されます.前者は変性性痴呆,原発性痴呆,あるいはAlzheimer型痴呆とも呼ばれています.この型の発現機序は不明ですが,最近神経伝達物質(セロトニン,アセチールコリンなど)の役割が注目されており,生化学的な異常が示唆されています.
Copyright © 1981, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.