Japanese
English
展望
老年期痴呆の構造と臨床類型(2)
Clinical Structure and Typology of the Dementia in Elderly (2)
室伏 君士
1
,
田中 良憲
1
,
後藤 基
1
Kunshi Murofushi
1
,
Yoshinori Tanaka
1
,
Motonori Goto
1
1国立療養所菊池病院
1National Sanaorium Kikuchi Hospital
pp.848-855
発行日 1988年8月15日
Published Date 1988/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405204563
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Ⅳ.血管性痴呆の構造と臨床類型
脳血管障害による精神症状は,一般にはWieckによる機能精神病(Funktionspsychose)の通過症候群に一致する31)。これはいわゆる機能性精神病(funktionelle Psychose)の概念と異なり,脳の直接あるいは間接的な疾患過程により,各種の脳機能の低下で起こされる精神障害であるが,この多くは可逆性をもつ一時的な精神症状で,通過症候群(Durchgangssyndrom)と呼ばれている(表3,7号735頁参照)。脳障害(意識障害など)の後から,それが回復するまでに現われる症状で,このなかで,軽症および中等度通過症候群が,脳梗塞などの初期から中期にかけて,よく認められる。とくに中等度のものは,痴呆と見誤られたりする。
これらは主として器質性変化によるものであるが,意識障害がらみあるいは要素機能の調節(抑制や脱抑制)や統合あるいは統御などの機能障害に由来するところが多く,したがって陽性症状なども目立って認められる。そして軽症のものは1〜3カ月以内,中等度のものは6カ月位のうちに回復するものが多い。この通過症候群はケアや薬などの治療によっても動きうる(治る)範囲のものである。
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