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はじめに
成人T細胞白血病(ATL)に感染性のレトロウイルス(HTLV-I)が関与していることから注目を集めているが,これにはいくつかの理由がある。まず,長い間ヒトのレトロウイルスは探し続けられたが,1980〜82年にATLにHTLV−Iが発見されるまでは確かなヒトレトロウイルスの記載はなかった1〜3)。HTLV-Iはヒトの最初のレトロウイルスである。第2に,レトロウイルスは細胞癌化の研究にきわめて有効であることが,動物のレトロウイルスの研究で明らかになっていたから,ヒトのレトロウイルスはヒトの癌の研究に役に立つと期待されたからである。第3に,ATLがウイルスが原因で起こるならば,その診断,予防,治療に有効な対策を考えることができると思われたからである。九州におけるHTLV-Iの感染率が世界的にも最も高いことから,とくに日本では注目されている。HTLV-Iおよびそれをめぐる研究は,現在までのところその期待に沿って進展していると思われる。
ところが,予期せぬことにHTLV-Iと思われるレトロウイルスが特定の神経疾患に関与することが,納らにより報告され4),さらに多くの注目を集めることとなった。この理由もATLとレトロウイルスの関係で注目された理由とまったく同じであろうと思われる。
General features of the retroviruses are summarized and compared with the human T cell leukemia virus (HTLV-I). The unique genes of HTLV-I and their functions are also summarized. Retrovirus detected in lymphocytes in peripheral blood of patients with HTLV-I associated myelopathy (HAM) was characterized in Southern blotting procedure and compared with those of the HTLV-I which had been isolated from patients with adult T cell leukemia. The results indicated that these two viruses could not be distinguished each other. Random mode of the provirus integration was observed in 8 out of 9 patients analyzed.
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