今月の主題 エピジェネティクスと臨床検査
トピックス
レトロウイルスとエピジェネティクス
松岡 雅雄
1
Masao MATSUOKA
1
1京都大学ウイルス研究所
キーワード:
レトロウイルス
,
エピジェネティクス
,
潜伏感染
,
組み込み
Keyword:
レトロウイルス
,
エピジェネティクス
,
潜伏感染
,
組み込み
pp.689-692
発行日 2008年6月15日
Published Date 2008/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542101627
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1.はじめに
レトロウイルスは感染後,逆転写酵素の働きによりウイルスゲノムRNAから相補性DNAを合成し,さらにインテグラーゼがDNAを宿主ゲノムに組み込む.この状態をプロウイルスと呼ぶが,プロウイルスからウイルス遺伝子が転写されウイルス粒子を形成する蛋白質が翻訳されるとともにウイルスゲノムRNAが転写され,アッセンブリーされた後にウイルス粒子として細胞外へと出芽していく.レトロウイルスの生活環において宿主ゲノムへの組み込み(インテグレーション)は必要不可欠なステップであり,プロウイルスは必然的に組み込まれる周囲のゲノムからの影響を受けることになる.ヒトに病原性を有するレトロウイルスはエイズを起こすヒト免疫不全ウイルス(human immunodeficiency virus;HIV)と,成人T細胞白血病(adult T-cell leukemia;ATL)の原因であるヒトT細胞白血病ウイルス1型(human T-cell leukemia virus type 1;HTLV-1)であるが,組み込み部位,エピジェネティック変化に関して両者は大きく異なる特徴を有する.
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