講座 臨床ウイルス学・11
癌とレトロウイルス
西澤 誠
1
,
豊島 久真男
2
1東京大学医科学研究所・癌ウイルス研究部
2東京大学医科学研究所制癌研究部
pp.1446-1451
発行日 1986年8月10日
Published Date 1986/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402220504
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
今までの連載講座でかなりの重要なヒトの癌ウイルスが取り上げられているので,ここではレトロウイルスの研究から,ヒト癌の発癌機構の解析の鍵を握る癌遺伝子の研究が展開されて来た過程を中心に,現在までの進歩をまとめた.
レトロウイルスのレトロとは「逆」を意味する言葉である.生物の遺伝情報はDNA→RNAの方向に伝わるというセントラルドグマに反し,増殖の過程にRNA→DNAへの逆転写を含むからである.レトロウイルスのうち細胞や個体を急性に効率よく癌化する能力をもつ強発癌性ウイルスをRNA腫瘍ウイルスとも言う.RNA腫瘍ウイルスはニワトリ,マウス,ラット,サルなどの実験動物で数十種類も見つかっているが,ニワトリのウイルスが最も盛んに研究され,いわゆる癌遺伝子の研究に最も貢献したと言ってよかろう.筆者らが主に扱ってきたのもニワトリのRNA腫瘍ウイルスであるので,これを中心に話しを進めたい.
Copyright © 1986, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.