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I.はじめに
老年痴呆における生化学的アプローチ,とくに神経伝達物質に関する研究は,神経病理学的アプローチが古くから行なわれてきたとの対照的に,最近の10年間くらいに分析技術の進歩とともに発展してきた。このような研究は,その対象とする疾患の生化学的病態を究明するだけでなく,その異常を是正しうる薬物による新しい治療法の想定という二重の意義がある。この典型的な例として1960年代からのParkinson病の研究があげられるが,それ以後同じstrategyを用いた研究がHuntington病や老年痴呆にも行なわれるようになった。
老化との関連も含めて老年痴呆に関する神経伝達物質の研究は,ヒト死後脳を対象とする研究と,ラットなどの実験動物を用いた研究に大別できる。加齢に伴う神経伝達物質の変化が種属によって異なる可能性があること,また老年痴呆に特微的な神経病理所見のひとつであるAlzlmeimer神経原線維変化(ANF)がヒトにしかみられない2)ことなどから,老年痴呆の発症には何らかのヒトに特有な病態生理が関与している可能性が示唆され,ヒト死後脳の研究が老年痴呆の病因・病態の解明に必要不可欠であることはいうまでもない。しかし,このヒト死後脳の研究には後述するように多くのartifactsが含まれる可能性がある。この点では,動物脳を用いるのが最適であり,さまざまな方法論を用いて作業仮説に基づいた検討が可能である。
Abstract
Biochemical study in postmortem brains with Alzheimer-type dementia (ATD) was briefly re-viewed.
Such factors as age, drug treatment, circadian rhythms, agonal state and postmortem delaycould influence biochemical markers in postmor-tem brains. Therefore, ATD and control groups should be carefully matched.
The cholinergic deficit is the most widely accepted abnormality in ATD brain. However, alterations of neurotransmitter contents in other systems have been also reported. Therefore, we examined neuropathologically diagnosed ATD bains with short postmortem delay.
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