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I.はじめに
脳浮腫は,頭部外傷,脳腫瘍,脳血管障害の他,低酸素症,感染,中毒など様々な疾患に伴って発現し,浮腫の進展の程度はその原疾患の予後をも決定する重要な因子といえる。脳浮腫が進行すれば,頭蓋内圧(ICP)の亢進あるいは脳の偏移をきたし,さらに脳循環および代謝の障害が助長され,これが一層脳浮腫を増強させるという悪循環となって,終には脳herniaを惹起し,死の転帰に至り得るのである。したがって,脳浮腫に対して適切なる予防および治療策を講じることは,われわれ臨床家にとってはきわめて重要な課題といえる。
脳浮腫の予防および治療の対策は,いうまでもなく,浮腫をもたらした原疾患の病態をよく理解した上で行なうべきである。脳浮腫に対する基本的な治療としては,現在,mannitol,steroidなどの薬物療法が主流を占めているが,このような内科的療法では救命し得ない症例には,さらに外科的治療が考慮されねばならない。外科的治療は,減圧開頭術と持続脳室ドレナージとが大きな二つの柱であり,ともに脳浮腫に対して優れた減圧効果が期待できる方法であるが(図1),本稿では紙面の都合上,外科的療法の項は割愛させていただき,以下,現在一般的に行なわれている内科的療法の有効性とその問題点について概説し,最後に最近のわれわれの治療法の研究成果について述べる。
Abstract
Cerebral edema is a relatively common reaction of central nervous system to traumatic, ischemic, hypoxic, toxic or inflammatory injuries. The de-velopment of the edema often determines the prognosis for the disorder. The brain swelling leads a rise of intracranial pressure. This increase, together with the disturbance of the vascular autoregulation (vasoparalysis), decreases the cere-bral blood flow, thereby potentiating the edema due to decrease of oxygen supply. This vicious cycle must be interrupted before the critical per-fusion pressure is reached.
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