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I.歴史的背景
ヒトを含む脊椎動物の中枢神経系において,グリアがどのような母細胞から,いつ,どのようにして作り出されてくるか,という問題を初めて科学的に追求したのはWilhelm His(1889)である18)。Hisの学説はグリアとニューロン発生の二元論の嚆矢となったものであるが,約百年後の今日まで,神経系の細胞発生の考え方にきわめて大きい影響を与え続けてきた点で,今なおその重要性は失なわれていない。
サメやイモリからウサギやヒトの神経系の初期発生を組織学的に研究したHisはそのすべての種の神経管が図1のA,Bに示すような二つの異なった形態を持つ細胞から構成されていることを指摘した。Hisはちょうどその頃,精巣の組織学的研究を行なっていたので,精細管の細胞溝成と神経管のこの形態の類似性に強く啓発されるものがあった。神経管壁の内腔面直下にある球形で,ほとんど常に分裂期の核構造を示している細胞(A)をKeimzellen(胚芽細胞)と呼び,それ以外の伸び拡がった細胞を間質細胞と考えてSpongioblasten(海綿芽細胞)と名づけたのは,それらと,精細管における胚芽細胞たる精母細胞や,支持細胞としてのSertoli細胞とのアナロギーに基づくものだったのである18)。胚芽細胞というすこぶる中枢神経系にはふさわしくない名前も,この着想の背景を知ればなるほどとうなずけるものがある。
Abstract
Histogenesis of neuroglia has been a controversial subject since the very beginning of microscopic study on development of the central nervous system (His, 1889; Schaper, 1894).
According to His' germinal cell theory, there are differentiated 2 types of stem cells from the earliest stage of neural tube formation; The germinal cells, specialized neuron producing cells, and the spongioblasts, committed precursors of neuroglia. His' theory was radically criticized by Schaper as early as 1894, and F.C. Sauer (1935) resumed the challenge.
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