Japanese
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特集 神経系の機能形態学
オートラジオグラフィー法を用いる線維連絡の研究
Autoradiography for the study of neuronal connections
中村 泰尚
1,2
,
杉本 哲夫
1
,
野村 嶬
1
Yasuhisa Nakamura
1,2
,
Tetsuo Sugimoto
1
,
Sakashi Nomura
1
1京都大学医学部解剖学教室第一講座
2金沢大学医学部解剖学教室
1Department of Anatomy, Faculty of Medicine, Kyoto University
2Department of Anatomy, school of Medicine, Kanazawa University
pp.603-611
発行日 1981年6月10日
Published Date 1981/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1431905296
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はじめに
簡単な反射運動,外界刺激の知覚,さらに複雑な行動,記憶,思考という神経系の機能を理解しようとするとき,どのような神経細胞のグループ,あるいは個々の神経細胞が相互に連絡しているかという知識なくしては考えを進めることができない。そのため一世紀にわたって中枢神経系のいろいろの部位に損傷を与えた後細胞体から軸索終末に向かう変性を髄鞘,軸索に求める順行性変性法,あるいは逆方向に軸索から細胞体に及ぶ変化を見る逆行性変性法などを用いて線維連絡の研究が続けられてきた。このうち後者についてはHRPの軸索内逆行性輸送を利用する方法が開発されこれに取って替わられた感がある。本特集の別項で述べられている。いっぽう順行性の変性法についてはNauta-Gygax法あるいはその変法であるFink-Heimer法などの鍍銀法によって中枢神経系の線維連絡が隈なく明らかにされたようであったが,どの程度末端まで軸索の変性が捉えられているかという点,それに脳内に傷をつける時の副損傷が実験結果にどのような影響を及ぼしているかということが常に問題となっていた。電子顕微鏡下に変性軸索終末を求めてより詳細に線維結合様式を解明しようという試みも,とくに後者の問題を解決できなかった。
ここに登場したのが外界から投与された物質をニューロンが取り込み,処理するという生理的な過程を利用する方法である。
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