特集 医学写真
技術解説
オートラジオグラフィー
平田 明
1
1小西六写真工業株式会社化学研究所
pp.550,563-568
発行日 1967年8月15日
Published Date 1967/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542916176
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はじめに
オートラジオグラフィーとは,一口にいうと標本中の放射性同位元素(ラジオアイソトープ)の分布を,それから出る放射線の感光作用によって,標本に密着させた写真乳剤膜に直接記録させる方法である。もう少し具体的に説明すると,ある化合物の生体内での挙動を知りたいときは,この化合物を適当なラジオアイソトープでラベルして,これを生体内に入れ,その動きをラジオアイソトープから出る放射線を目印にして,適当な検出器で検知すればよい。このような方法を一般にトレーサー技術というが,電気的な検出器の代りに写真感光材料を用いる方法がオートラジオグラフィである。方法は,動物に投与した後,一定時間経過したところで,所定の臓器をとり出し,それの組織標本を作る。この上に後で説明するミクロオートラジオグラフ用乳剤をかぶせて,1〜2週間放置する。これを現像,定着など,通常の写真処理を行なった後,切片を適当な色素で染色して,顕微鏡で観察すればよい。組織や細胞内にとり込まれたラジオアイソトープの局在を,組織像の上に重なった現像銀の分布として見ることができる。この方法はオートラジオグラフィのなかでもミクロオートラジオグラフィと呼ばれ,細胞生理学,細胞化学的な研究面に大きな貢献をしてきた。最近では,より解像力のすぐれている電子顕微鏡を用いての電子顕微鏡的オートラジオグラフィの技法も研究され,両者共,今後ますます進展するものと思われる。
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