小頭症モデル—化学物質の胎生期投与による

Experimental models of microencephaly induced by prenatal chemical insult

はじめに

　実験奇形学の歴史の上で，X線照射^9,15）や化学物質の投与^{20,27,51,54,62）}によって惹き起こされる実験的小頭症動物が，その発現機序の解明という分野にまで登場したのはまだ最近のことである。

　小頭症（microcephaly）または小脳髄症（microencephaly）^64）はその成因に基づく分類によれば，遺伝因子による一次的な遺伝的小頭症（genetic microcephaly）と，胎生期における，ウイルス感染症，放射線被曝，化学物質（有機水銀など）などによる脳障害，あるいは周生期または新生児期における無酸素症，低血糖，慢性硬膜下血腫，化膿性髄膜炎などによる脳障害のために二次的に惹き起こされる獲得性小頭症（acquired microcephaly）に分けられている^10,43）。しかしこれらの因子によるヒト小頭症の発現機序についてはまだ充分な知見は得られていない現状である^52）。

　Recent morphological, biochemical and functional findings on experimental microencephaly induced by prenatal administration of mitotoxic agents including cytosin arabinoside (ara-C), 5-azacytidine (5-ACDR) and methylazoxymethanol (MAM) were reviewed.