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特集 プロテインホスファターゼ―最近の進歩
胎生期脳のチロシンホスファターゼ
Protein tyrosine phosphatases expressed in the developing central nervous system
田川 雅敏
1
,
白沢 卓二
2
Masatoshi Tagawa
1
,
Takuji Shirasawa
2
1千葉大学医学部生化学第一講座
2東京都老人総合研究所病態老化学研究系分子病理研究室
pp.142-145
発行日 1995年4月15日
Published Date 1995/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425900899
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蛋白質のチロシン残基の脱リン酸化を担うチロシンホスファターゼは,細胞内刺激伝達系の各段階で作用すると考えられ,チロシンキナーゼと並んで重要な生物学的特性を有すると推察されている。しかし残念ながらこれを実証する具体的な事実に乏しいのが現状である。一方,その遺伝子の塩基配列はすでに多くの例で明らかにされており,推察されるアミノ酸配列から,高分子量の受容体型と低分子量の細胞質型にチロシンホスファターゼは分類される1)。また約300個のアミノ酸からなる酵素活性を有するホスファターゼドメインの存在も知られている2)。
神経細胞においても多くの生理的反応が蛋白質のリン酸化によって制御されると考えられており,これを支持するように神経細胞ではチロシンキナーゼが豊富に分布している。またショウジョウバエで得られている変異株の解析から,チロシンキナーゼの機能についての研究が進められている3)。しかし神経細胞におけるチロシンホスファターゼの生物学的意義の解明は遅れているばかりか,その発現についても明らかにされている例は多いとはいい難いのが現状である。われわれは神経細胞の増殖と分化との接点を捜る目的で,胎児脳のチロシンホスファターゼの解析を開始したが,本稿では現在まで知られている胎児神経細胞における同酵素の発現様式と,最近われわれが単離しえた胎生期中枢神経に発現するチロシンホスファターゼ遺伝子について解説したい。
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