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Ⅰ.緒言
精神薄弱児の頭囲は,その62.3%が平均値より小さいといわれているが,Tredgoldによると全精神薄弱中・小頭症の占める割合は僅かに0.5%に過ぎないという。その発生原因および分類についての記載は従来より多くなされていた。Maschen10)は小頭症を広義と狭義とに区別した。Giacomini1)は純粋の脳発育停止による真性小頭症(echte Form)と脳膜や大脳皮質の炎症過程に基づく仮性小頭症(unechte Form)とに分けた。Pelliz1)はechte Formをさらに大脳皮質に著変を認めない脳萎縮を主とする単純型(einfache Form)と炎症過程の残遺を伴つた脳萎縮を主とする混合型(gemischte Form)の2型に分類し,unechte Formは炎症過程による大脳皮質の不規則な萎縮が主要な所見であるといっている。Virchow9)は頭蓋骨が完全な発育を遂げる以前に,縫合化骨癒着し,そのために脳は二次的に発育障害を受けるのではないかと考えた,Evens1)はインド(パンジャブ)で遺伝性小頭症らしい白痴の1例を確認し,Hiltyはその両親が従兄妹の血族結婚による小頭症の1例を報告した。本症の家族的発現は,しばしばBernstein,Dannenberger,Goldbladt,Pilcz,Tambroni,Vivald1)らにより記載され,1906年Vogt10)により詳細に報告された。Giacomini,Pfleger,Pilcz1)は本症の原因因子が胎児の組織に直接加わるのではなくて,その尊族親に加わり,恐らく妊娠と同時に胎児に影響するのであろうという解釈をした。Riva(1912)1)はechte Mikrozephalieを遺伝性変質性疾患(一種の先祖返り)と考え,Dannenberger(1912)1)は本症の作因は母によつて伝えられ,胎児の結締組織や神経組織における炎症過程によつて起ると述べ,Bernstein(1922)1)は同胞10人中5人に現われた小頭性白痴の身体的および精神的所見の一致する点から,本症が劣性遺伝の型式をとるのであろうと述べた。
本邦においては富沢・中村・渡辺・福沢・石井・塚永・満川・佐野・原・尾崎・田辺および中野らの諸氏により遺伝・臨床および剖見などの立場から報告がなされている。
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