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I.緒 言
ワクチンの製造過程のなかでウイルスを増殖させるために動物の中枢神経を用いたものでは多少の脳成分が混入することは避けられない。現に日本脳炎ワクチン中の蛋白窒素含有量の上限として10μg/mlが製造基準に規定されているが,その微量の脳物質によって被接種者にアレルギー性脳脊髄炎が起こる可能性を理論的に全く否定することはできない。
わが国や外国においても,かつてウサギ脊髄を用いてつくったPasteur型狂犬病ワクチンがかなりの頻度で使用された時期には,ワクチン接種によって起こったと考えられるアレルギー性脳脊髄炎の実例も多かった2,4〜6,8,10,11)。それに比べて日本脳炎ワクチンの接種によってはきわめてまれにしか起こっていない7)。このような違いがあるのは第一には,それぞれのワクチン製造に用いられる中枢神経が,一方はウサギ脊髄であり,他方はマウス脳という質的な違いがあること,第二に両ワクチンに含まれる脳物質の量の違いがあることによると考えられる。しかし意外にも国の内外を問わず,その違いについての実験的根拠が見つからない。そこでわれわれは,2種の異なった抗原としてウサギ脊髄とマウス脳を,濃度別に2種類の実験動物であるモルモットとカニクイザルに接種して,実験的アレルギー性脳脊髄炎(EAE)の発生頻度,抗原量,潜伏期間ならびに病変の発生部位と性状などの病理学的所見を比較した。
Abstract
Two antigens, mouse brain (MB) and rabbit spinal cord (RSC), and two host animals, cynomolgus monkeys and guinea pigs, were used in the present examination in order to determine the antigen doses required to elicite experimental allergic encephalomyelitis (EAE). The EAE was induced with the antigens in FCA in ordinary way. Antigen doses were expressed as nitrogen contents. The following results were obtained.
1) The MB antigen was required 10 times larger dose than that of the RSC antigen to cause EAE in the same degree in the guinea pigs.
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