Japanese
English
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
多彩な小脳症状を統一的に理解するためこれまで多くの努力がなされてきた。その一つの大きな方向は小脳症状を整理し,一次的なものと二次的なものを分け,少数の基本的な症状に還元・帰着することを目指すもので,Holmes1)が運動開始の時間遅れを強調したり,Nyberg-Hansen2)がataxiaをもってすべてを説明しようと試みているのはその例である。このような努力はもちろん重要であるが,それだけではこれ以上新しい発展は期待できない,というのが筆者の率直な意見である。小脳の内部でどのようなプロセスが行なわれているかについての生理学的な知見や,小脳が生体の制御機能の中でどのような役割を担っているかについての工学的な理解を土台にして小脳症状の意味を根本的に考え直してみることが現時点でははなはだ重要なことに思われる。もちろんそのような努力は比較的最近始まったばかりであり,小脳症状のすべてに満足の行く説明を与えることは困難であるが,これまで純現象論的な取扱いに終始せざるを得なかった小脳の症候論に実体論的な基盤を与えることを可能にする重要な方向としてその発展に期待したいと思う。本稿では最も基本的であると思われる小脳症状の三つの要素をあげ,これが各種の動物実験を通じてどのような形で実験的に再現されるかを述べ,さらにこれら症状の工学的,サイバネティックス的な解釈を試みたいと思う。
Clinicopathological studies revealed three characteristic features of cerebellar functions; 1) coordination, 2) orthometry, and 3) compensation. On the other hand, recent cybernetic interpretations point to three major features characteristic to cerebellar functions; 1) multivariable, 2) non-feedback, and 3) adaptive or learning. Consistency of these two lines of considerations is demonstrated with various examples of functional subsystems in which the cerebellum is involved.
Copyright © 1978, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.