特集 神経学における最近の研究
<臨床>
痴呆の病態的基礎—老化脳の生化学的変化
播口 之朗
1
,
多田 国利
1
,
西村 健
1
1大阪大学医学部精神医学教室
pp.848-850
発行日 1978年7月10日
Published Date 1978/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1431904958
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初老期痴呆に属するアルツハイマー病や老年痴呆の患者では重篤な痴呆症状とともに特徴的な脳の病理組織学的変化(脳の萎縮,神経細胞数の減少,神経細胞体の萎縮,ニッスル小体の減少,リポピグメントの沈着,顆粒空胞変性,老人斑,神経原線維変化など)がみられる。このような変化は"脳の老人性変化"と呼ばれ,それらの軽度のものは60歳以上の正常老人脳でも認められる。したがって痴呆脳での変化は生理的にみられる脳の老人性変化が急激かつ高度に発現したものとしてとらえられることから,痴呆脳の病態的基礎を検討することは脳老化の発現機序解明への重要な手がかりとなりうる。このような観点から最近約10年間に特に精力的な研究が行なわれ,かなりの成果が挙げられたアルツハイマー病および老年痴呆の脳の生化学的変化に関する知見をまとめてみた。
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