Japanese
English
特集 神経系の加齢
初老期・老年期痴呆の脳蛋白代謝
Brain protein metabolism in presenile and senile dementia
播口 之朗
1
,
西村 健
1
,
金子 仁郎
1
Shiro HARIGUCHI
1
,
Tsuyoshi NISHIMURA
1
,
Ziro KANEKO
1
1大阪大学医学部精神医学教室
1Department of Neuropsychiatry, Osaka University Medical School
pp.702-709
発行日 1973年8月10日
Published Date 1973/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1431903534
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Ⅰ.老化研究モデルとしての痴呆脳
老年期には個体差はあるにしても多かれ少なかれ脳の働きが低下する(正常老化)。とりわけ初老期痴呆に属するアルツハイマー病や老年痴呆の患者では高度な記憶障害,失見当識,失語,失行,失認,高等感情の低下など広範な精神・神経機能の低下を来たし痴呆状態に陥る(異常老化あるいは病的老化)。このような精神・神経機能の老年性変化成立の身体的背景として中枢神経系の老化過程がある。老年者の脳は種々の程度の萎縮を示し,脳の回転は狭く,溝は広く深くなり,脳室は拡大する。顕微鏡下では神経細胞数の減少,神経細胞体の萎縮,ニッスル小体の減少,lipopigmentの沈着,神経原線維変化,老人斑など多彩な変化がみられる。このような脳の「老人性変化」はアルツハイマー病や老年痴呆では健常老人脳よりもはるかに高度で豊富に認められる。したがって正常老化と異常老化の類似性および脳機能変化と形態学的変化との相関性などから,これらの疾患は脳老化過程研究の好適なモデルとして研究対象になりうるのである。
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