特集 神経学における最近の研究
<臨床>
脳の発達障害—眼球運動の面から
榎本 貴夫
1
,
大野 耕策
1
,
北原 佶
1
1烏取大学医学部脳幹性疾患研究所施設脳神経小児科
pp.787-789
発行日 1978年7月10日
Published Date 1978/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1431904933
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小児神経学の主要なテーマは発達障害である。他の臨床の分野と同じく小児神経学も関連領域の影響を受けつつ進歩してきたが,神経耳科学,神経眼科学については,小児神経学領域において十分に利用されていない。小児神経疾患の多彩さ,診察方法の困難さ,あるいは発達に伴う変容などが小児神経疾患の神経眼科的評価を不十分なものにしていると考えられる。もとより視機能あるいは眼球運動機構と中枢神経には発生学的にも機能的にも密接な関係があるから,小児の神経病巣診断に際しても客観的で有力な情報を与えてくれるであろうことは論を待たない。大脳半球視運動領野から,中脳,脳橋に至る視運動経路の異常による自発眼球運動や,視運動性眼振の障害,温度眼振試験と姿勢保持機能や前庭機能障害との関係,視標追跡の滑動性の発達を加味した評価などは日常の臨床に導入されつつある9,10)。にもかかわらず小児の眼球運動異常と脳の局在や成因との関係は,今後の研究課題といえよう。脳の発達障害について取り上げるべき問題は多いが,本稿においてはとくに各種の脳障害に付随する眼球の位置,運動異常に焦点を合わせ,われわれの分類と教室例の概略を示すことにした。
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