特集 神経学における最近の研究
<臨床>
衝動性眼球運動異常
山崎 篤巳
1
1北里大学眼科
pp.785-786
発行日 1978年7月10日
Published Date 1978/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1431904932
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最近の猿を使っての電気生理学的実験によって,異常眼球運動の病態は徐々にわかりつつある。
速い眼球運動である衝動性眼球運動はパルス・ステップ状の神経発火頻度からなり,このパルス・ステップの神経指令を与えている中枢部位として,橋と延髄頭部の中央両側に存在する橋傍内側網様体PPRF(PontineParamedian Reticular Formation)が重要視されている。PPRF中には次の3種類の神経細胞(ユニット)が存在する1,2)。1)群発細胞(burst cell)はPPRFに平均して存在するが,とくに外転神経核前極に密集する。この細胞は衝動性眼球運動や眼振の急速相を起こすためのパルス発生器(pulse generator)として働く。2)持続性細胞(tonic cell)は群発細胞と混在して存在し,とくにPPRFの尾部に多い。衝動性眼球運動前後の眼球位置に対応して,その活動放電頻度がステップ状に変わり,神経積分器(neural integrator)の性質をもっている。これらの神経積分器の出力である眼球位置信号は一部はステップ信号として,群発細胞の出力であるパルス信号に加算されパルス・ステップ信号として限球運動ニューロンに伝えられる。また,眼球位置信号の一部は遠心性コピーとして同時に高位眼球運動中枢(前頭葉,上丘,小脳)に伝えられ,衝動性眼球運動を駆動する入力として使われるらしい。
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