特集 神経学における最近の研究
<臨床>
神経系のlateralization
豊倉 康夫
1
1東京大学医学部脳研神経内科
pp.779-780
発行日 1978年7月10日
Published Date 1978/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1431904929
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1.DaxとBrocaの発見
大脳半球をはじめ中枢神経系は形態学的にも機能的にも左右対称であるという考えは,人類の長い歴史のなかで実に19世紀に至るまで誰も疑いをさしはさまなかった。『失語症患者の脳損傷は左大脳半球にある』というMarc DAXとPaul BROCAによる偉大な発見が,この神話を破ったのである。これはまさに破天荒な発見であって,それ以後の生物学の流れを変えたほど重要なエポックとなった。
上記の命題については,言語機能の半球優位性の問題を論ずる前に,現在では利き手との関係が強く打ち出されてきている。結論的にいえば,右手利きの失語症患者では,その損傷はほとんどすべて左大脳半球にあり,左手利きの失語症患者では約2/3が左大脳半球に,約1/3が右大脳半球に損傷を有するという形で理解されている。左手利きは全人口の5〜10%に過ぎず,したがって任意の集団について「失語症患者の脳損傷は左大脳半球にある」という命題は,きわめて普遍性の高いものである(ZANGWILLはに94.2%,ROBERTSは91.7%という数字をあげている)。しかし,理解をかんたんにするために,本文では以下すべて通常の右利きの人に限って話を進める。
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