はじめに—神経系におけるHierarchyとLateralization，さらに左右の統合へ

Hierarchy, lateralization and interhemispheric integration of the nervous system

左と右

　古事記，日本書紀という日本最古の物語をひらくと，イザナギ・イザナミの命が天の御柱をめぐるとき，それぞれ，「汝は右よりめぐり逢え，我は左よりめぐり逢わむ」，「陽神は左よりめぐり，陰神は右よりめぐる」という件りが冒頭に出てくる。

　聖書はどうであろうか？旧約聖書・士師記・20章16節に出てくるベンヤミン族の左利きの兵のことを記した都分が有名である—「このすべての民のうちに左利きの精兵が七百人あって，いずれも一本の毛すじをねらって石を投げても，はずれることがなかった」そのほかにも左右を表わす記述は随所に出てくるのだが，ただ惜しおらくは，神がアダムの肋骨の1本をとり，イヴを創ったときの記述（旧約聖書・創世記・2章21節）の中では，1本の肋骨の左右の区別をしていない。左右の語が最初に出てくるのは，アブラムとロトが左右の道を前に別れる件りである（旧約聖書・創世記・13章9節）。