特集 神経学における最近の研究
<生化学>
実験的フェニールケトン尿症(PKU)
平野 修助
1
1東邦大学医学部第二生理学教室
pp.739-741
発行日 1978年7月10日
Published Date 1978/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1431904915
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フェニールケトン尿症(PKU)が神経化学の領域で取り上げられるのは,この疾病に随伴する神経機能障害が物質代謝の異常に基づいていることで,複雑な神経機能と物質代謝の相関を知る上で貴重な示唆を与えている点であろう。
1934年以来,A.FÖLLINGら1,2)の努力でPKUの病因が明らかにされ,さらにBICKELら3)はこの疾患でみられる精神薄弱の発生を未然に防ぐ手段を確立した。この方法は脳の発達期である乳児期を低フェニールアラニン食で育て血中フェニールアラニン(Phe)値を可及的に正常レベルに近づけておくことであった。しかし近年,PKUの母親から生まれた子供で代謝上なんらの異常がないのに精神薄弱である例が報告4)され,乳児期に限らず胎生期でも血中Pheの増加が非可逆性の機能障害を脳組織に起こしていることが明らかとなった。このような神経機能障害の本質を明らかにするには,神経組織そのものの変化を明確にする必要がある。そこでヒトに類似した実験モデルを作り,直接に脳組織での物質代謝の変化を調べ,神経機能障害の状態と対比させて機能障害の発生機構を解明しようとする試みが始められた。
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