特集 神経学における最近の研究
<病理>
化学発癌物質と脳腫瘍—ニトロソウレア誘発実験的脳腫瘍を中心に
石田 陽一
1
1群馬大学医学部第一病理
pp.745-747
発行日 1978年7月10日
Published Date 1978/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1431904917
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1.化学的発癌物質と実験的脳腫瘍
1939年SELIGMAN,SHEAR & ALEXANDER8)は炭化水素の1つである20-methylcholanthrene(20 MC)をペレット状に調製し,成熟マウス脳内に挿入埋没し,初めてグリア系腫瘍の実験モデルの作製に成功し,報告した。以後,この方法で内外の多数の研究者により追試が行なわれたが,とくにZIMMERMAN11)とその共同研究者により長期間にわたり20MCのほか3,4 benzpyrene,1,2,5,6 dibenzanthraceneなどを用い精力的に実験研究が行なわれた。癌原性物質の脳内埋没というかなり不自然な実験方法とはいえ,はじめはこの方法によってヒトのさまざまな脳腫瘍の実験モデルがつくられるものと期待がよせられていた。この方法によって脳腫瘍は実験後150日以上の潜伏期を経て,ペレットの周囲に形成される。マウスでは一般に肉腫が多く,組織学的なグリア系腫瘍の発生率は肉腫に比べると低い。膠芽細胞腫,オリゴグリアや星形グリアの腫瘍によく似た腫瘍が確かに形成されるが,また異型が強く,細胞由来を特定できないanaplastic gliomaもきわめて多い。
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