今月の主題 内科疾患としての先天性代謝異常
知っておきたいその他の代謝異常
フェニールケトン尿症
北川 照男
1
1日大小児科
pp.946-948
発行日 1976年7月10日
Published Date 1976/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402206646
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はじめに
今から40年も前に,ノールウェーのフェーリング博士が,たまたま精神薄弱患者の尿を調べている中に,塩化第二鉄溶液を滴下するとその色調が緑変する尿を排泄する患者を見出し,さらにこの患者の尿には大量のフェニールピルビン酸が排泄されていることを発見して,フェニールピルビン酸を排泄する白痴と名付けた.その後,この研究はジャービス博士によって受け継がれ,遺伝病であることとフェニールアラニンを代謝するフェニールアラニンヒドロキシラーゼという酵素の先天異常に基づく疾患であることが明らかにされた.そして,1954年にドイツのピッケル博士は,フェニールアラニンを代謝する酵素に異常があり,フェニールアラニンやその代謝産物が蓄積して精神薄弱を生ずるのならば,フェニールアラニンの少ない食餌を与えて,体内に蓄積するフェニールアラニンやフェニールピルビン酸を減少させれば,精神薄弱の進行を予防できるのではないかと考えた.そして,フェニールアラニンを除いた特殊ミルクを作って,その治療を試み,精神薄弱が改善されたことを報告した.
この研究が成功するまでは,フェニールケトン尿症を含めて,すべての精神薄弱には有効な治療法がないといわれていたが,治療のできる精神薄弱もあるとつうことが明らかとなって,フェニールケトン尿症が社会的に大きく注目されるようになった.
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