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フェニールケトン尿症という病気
永松 一明
1
1東京逓信病院小児科
pp.33
発行日 1963年1月1日
Published Date 1963/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611202470
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精神薄弱になる病気で治療をするとよくなるという病気はそう多いものではありませんが,そのうちの一つがフェニールケトン尿症であります.1934年ノールウェーの生化学者Föllingによって初めて発見された病気で,詳しく研究され,治療が可能となったのは1953年以後で,比較的に新しい病気といえます.わが国においても1951年台氏が,次いで1952年小林提樹博士が三兄弟例を報告したのを初めとし,最近次第に多く発見されつつあります.私も昨年1年3カ月の男児を見出し現在なお治療をつづけておりますが,その経験をも加えてフェニールケトン尿症(以下フェ症と略す)について解説したいと思います.
必須アミノ酸の一つであるフェニールアラニンは食品蛋白の3.8〜7.1%を占め,正常児では1日最低体重1kg当り90mgが必要量とされております.このフェニールアラニンは体内で体蛋白へ合成されますが,フェ症の場合はフェニールアラニンをチロヂンにかえるPhenyl alaninhydroxidaseが先天的に欠乏しているためにフェニールが利用されず,血中にたまり,他の過程を通りフェニール焦性ブドー酸およびその類似のものになって尿中に排泄されます.このようなフェニールケトン体が大量尿中に排泄されるところからフェニールケトン尿症と呼ばれております.
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