特集 神経学における最近の研究
<生化学>
神経系の機能と核酸
佐武 明
1
,
阿部 幸子
1
1新潟大学脳研究所神経化学
pp.715-716
発行日 1978年7月10日
Published Date 1978/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1431904905
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神経生物学において「神経機能がどこまで遺伝子に支配されているのか,遺伝子が機能として発現されるまでにどのような制御を受けるのか,また神経機能可塑性のしくみはいかなるものであるのか」は最も基本的命題である。
「核酸と神経機能」についての研究は,その他の生物科学研究と同じようにその時代一般の知識,考え方を反映していて,以前核酸がかなり直接的に神経機能とかかわり合うという考えも出されたことがあった。しかし現時点ではいわゆるcentral dogmaすなわち,「核内DNAのmRNAへの転写,mRNAから蛋白への翻訳」を経て生産された蛋白質,蛋白質集合体,あるいは蛋白質(酵素)により生産される低分子化合物の働きを介して神経機能が発揮されると考えるのが,現在までに主に神経生物学以外の分野において蓄積された研究成果から考えて妥当なものと思われる。なお,脳でもRNAからRNAへの転写系が報告されている1)が現時点ではその神経生物学上の意義を示す資料がない。
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