特集 神経学における最近の研究
<生化学>
神経系における環状ヌクレオチド—特にcyclic GMPについて
出口 武夫
1
1東京都神経科学総合研究所神経医化学研究室
pp.717-718,721
発行日 1978年7月10日
Published Date 1978/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1431904906
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神経伝達物質であるカテコラミンはアデニレートサイクレーズ→cyclic AMP依存性プロティンキナーゼ(A-キナーゼ)系を介して種々の代謝変化をひき起こすことが明らかになって来た。それに対し,アセチールコリン(Ach)がどのような機序によりその作用を発揮するのかについては,永い間その手掛りさえ得られていなかった。1970年GEORGEらが灌流心臓でAchによりcyclic GMPが増加することを報告して以来,脳切片,末梢臓器および培養細胞などでAchによりcyclic GMPの顕著な増加が起ることが明らかにされた。これらの事実に基づいてGOLDBERGは,カテコラミンとAchの拮抗関係を細胞内のcyclic AMPとcyclic GMPの拮抗作用によって説明できるとする『陰陽説』を提唱した1)。これは非常に魅力ある仮説ではあったが,5年を経過した現在でも,数多くの欠陥を持ったまま色あせようとしているのである(図1)。
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