特集 神経学における最近の研究
<解剖>
筋萎縮性側索硬化症—軸索変性の病理
金光 晟
1
1長崎大学医学部解剖学教室
pp.651-652
発行日 1978年7月10日
Published Date 1978/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1431904879
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1.一次損傷をうけた軸索の場合
切断された軸索の末梢側がWaller変性とよばれる変性像を示すことは1852年14)以来よく知られている。切断部より中枢側の軸索がどのような態度をとるかについては近年COLEとNAUTA(1970)4)による次のような実験がある。成熟ネコの内側毛帯を中脳の高さで一側性に切断したのち1〜66週にわたってNauta染色をほどこすと,切断部より中枢側の軸索は健側に比して径は小さくなるが変性像は示さないという。さらに,一次手術で内側毛帯を中脳の高さで一側性に切断し,1〜66週のちに二次手術として後索核を両側性に破壊して2週間後にNauta染色をほどこすと,いずれの例も後索核から中脳にかけて内側毛帯は両側性に変性像を呈示し,しかも一次手術の術側の内側毛帯の変性顆粒は健側より小さいという。つまり切断された軸索の中枢側には軸索変性は起こりにくいようである。
しかし幼若動物では切断部より中枢側の軸索変性は成熟動物よりは起こりやすいらしい。ALDSKOGIUS(1974)1)によると,幼若ネコの舌下神経を切断すると末梢側軸索のすべてに術後6〜20時間でフィラメントが軸索中心部に密集してその周辺をミトコンドリアや小胞がとり囲み,軸索細胞質の電子密度が増すといった変性の初期徴候が観察されるのに対して,中枢側では一部の軸索にのみ術後3〜6日で上記のような変性の徴候が認められるという。
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